「イラストレーター 年収」と調べると、400万円台、500万円近くといった数字が出てきます。思っていたより高いと感じた方もいれば、周りで絵を描いている人の実感とずいぶん違う、と首をかしげた方もいるかもしれません。
実はこの数字には、読むときに押さえておきたい前提があります。この記事では、「お絵かきクリエイター®」として絵を仕事にしている私が、公的なデータをもとにイラストレーターの年収を確認し、その数字の読み方と、フリーランスとして働く場合の収入のリアルを整理してお伝えします。
先に結論です。492.2万円という数字は、会社などに雇われて働く人の統計で、フリーランスで働くイラストレーターの収入には、そのまま当てはまりません。働き方ごとの違いを、表にまとめました。
| 働き方 | 年収の決まり方 | 数字の目安 |
| 会社などに雇われて働く | 給与として支払われる | 統計では年収492.2万円(令和7年賃金構造基本統計調査、厚生労働省 job tag) |
| フリーランスで働く | 1件あたりの単価×件数で決まり、手数料や経費が引かれる | 統計の対象外。単価3,000円×月20件なら、年間の売上は計算上72万円 |
フリーランスで年収を伸ばしている人は、件数ではなく、1件あたりの単価を上げています。具体的な考え方は、このあとの章で説明します。
この記事のポイント
- 厚生労働省のデータで見るイラストレーターの年収
- 年収492.2万円という数字の前提
- 会社員とフリーランス、それぞれの収入の決まり方
- 年収を上げている人が意識していること
- 単価の基準が違う仕事という選択肢
それでは早速見ていきましょう。
統計で見るイラストレーターの年収
厚生労働省のデータでは年収492.2万円
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」では、職業ごとの年収や求人の状況を公開しています。イラストレーターのページを見ると、令和7年の賃金構造基本統計調査をもとにした年収は492.2万円、平均年齢は39.8歳となっています。
| 項目 | 数値 | 出典 |
| 年収 | 492.2万円 | 令和7年賃金構造基本統計調査 |
| 平均年齢 | 39.8歳 | 令和7年賃金構造基本統計調査 |
| 就業者数 | 47,320人 | 令和2年国勢調査 |
| ハローワークの求人賃金(月額) | 24.6万円 | 令和7年度ハローワーク求人統計 |
| 有効求人倍率 | 0.06倍 | 令和7年度ハローワーク求人統計 |
出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「イラストレーター」
この数字は「雇われて働く人」の統計
ここで押さえておきたいのが、賃金構造基本統計調査は、会社などに雇われて働く人を対象にした調査だという点です。つまり492.2万円は、デザイン会社や制作会社などで働く会社員のイラストレーターの年収に近い数字で、個人で仕事を受けているフリーランスの収入は含まれていません。
実際はフリーランスで働く人が大半
同じjob tagのページには、実際にこの仕事をしている人が「多いと感じる」働き方を尋ねた結果も載っています。そこでは、自営・フリーランスが88.7%と、正社員の7.5%を大きく上回っていました。統計の年収は、イラストレーター全体のうちの一部の人の数字だと考えたほうが実態に近いのです。
会社員として働く場合の収入
求人は少なく、狭き門
ハローワークの有効求人倍率は0.06倍です。これは、仕事を探している人100人に対して、求人が6件ほどしかない状態を意味します。会社員としてイラストの仕事に就くのは、それだけ競争の厳しい道だと言えます。
描く以外の仕事も含めた給料
会社員の場合、毎月の給料が決まっている安心感がある一方で、描く絵のテーマや量は会社の方針で決まります。デザインやレイアウト、社内の資料づくりなど、イラスト以外の仕事も担当することが多いのが一般的です。
会社員イラストレーターの主な職場
会社員としてイラストに関わる仕事には、ゲームやアニメの制作会社、広告やデザインの制作会社、出版や印刷に関わる会社などがあります。どの職場でも、自分の描きたい絵より、会社や取引先が求める絵を描くことが仕事になる点は共通しています。
フリーランスの年収はどう決まるか
年収は「単価×件数」で決まる
フリーランスの収入は、とてもシンプルです。1件あたりの単価に、受けた件数をかけたものが売上になります。たとえば、スキル販売サービスでよく見かける価格帯で計算してみると、次のようになります。
| 1件の単価 | 月の件数 | 年間の売上(計算上) |
| 3,000円 | 20件 | 72万円 |
| 10,000円 | 15件 | 180万円 |
| 30,000円 | 10件 | 360万円 |
数千円の案件で年収を増やそうとすると、とにかく件数をこなすしかありません。ひと月に20件の絵を描き、やり取りや修正にも対応するのは、副業ではもちろん、専業でもかなりの負担です。
手数料や経費を引くと、手元に残るのはさらに少ない
上の表は売上の計算で、ここからサービスの手数料や、画材・ソフトの費用、税金などが差し引かれます。会社員の年収と同じ感覚で比べると、フリーランスの実際の収入は見た目よりも低くなることを覚えておきたいところです。
収入が月ごとに大きく変わる
依頼が重なる月もあれば、ほとんど来ない月もあります。収入の波が大きいと、年収としては同じでも、生活の安心感はまったく違ってきます。「次の依頼が来るかどうか」を気にし続ける毎日は、思っている以上に心が疲れるものです。
年収を上げているイラストレーターが意識していること
それでも、フリーランスとして年収を伸ばしている人はいます。共通しているのは、件数を増やすよりも、1件あたりの単価を上げる工夫をしている点です。
単価を上げている人に共通する3つの工夫
- 得意な分野を絞って、「この分野ならこの人」と指名されるようにしている
- 一度取引した相手から、継続して依頼をもらえる関係を作っている
- 絵だけでなく、企画や提案まで含めて引き受けている
特に大きな分かれ道は「企画や提案」
3つ目の「企画や提案まで含める」は、絵を描く人にとって特に大きな分かれ道だと私は感じています。絵そのものではなく、依頼主の課題を解決する役割まで担うと、値段の考え方がまるで変わるからです。
単価の基準が違う「お絵かきクリエイター®」という働き方
「お絵かきムービー®」とは
私が今している仕事は、まさにこの「企画から引き受ける」形のものです。「お絵かきクリエイター®」は、企業や個人事業主の想いやサービスを聞き取り、見る人の心に残るストーリーに組み立てて、「お絵かきムービー®」というプロモーション動画に仕上げます。映像はホワイトボードに手描きの絵と文字で描き進め、ナレーションとともに伝える形です。
手描きの絵で説明するだけの動画なら、一般的な「ホワイトボードアニメーション」と変わりません。依頼主の想いをストーリーとして組み立てるところまで手がけることで、企業のプロモーション予算から依頼される動画になります。「お絵かきクリエイター®」「お絵かきムービー®」という名称はどちらも株式会社アクアフィールドの登録商標で、一般社団法人 国際じぶんストーリー協会の認定を受けた人だけが名乗れます。
1件の単価が大きく違う
フリーランスのイラストが数千円単位で比べられやすいのに対して、協会は「お絵かきムービー®」の最低単価を35万円と定めています。この基準があるので、始めたばかりの時期でも価格競争に巻き込まれずに済みます。計算上は、月に1本受けるだけで年間420万円になり、「単価×件数」の考え方がまったく違ってくるのが分かると思います。
もちろん、最初の1本を受注するまでは誰でも苦労します。ただ「お絵かきムービー®」は口コミで広がりやすく、納品したクライアントから知り合いの経営者を紹介してもらえることも多いので、実績が増えるにつれて案件は安定していきます。1年目の収入の動き方は、こちらの記事でシミュレーションしています。
イラストレーターの年収に関するよくある質問
Q. 「絵師」の年収も同じくらいですか?
SNSなどで作品を発表し、依頼を受けて描く「絵師」は、ほとんどが個人で活動しています。そのため、統計の年収よりも、ここで紹介したフリーランスの「単価×件数」の考え方が当てはまります。人によって収入の差がとても大きいのが特徴です。
Q. 副業のイラストでは、どのくらい稼げますか?
副業の場合、描ける時間が限られるため、件数を増やすのは難しくなります。単価が数千円の案件が中心だと、月に数万円に届くまでにもかなりの時間がかかるのが現実です。詳しくはこちらの記事でもお伝えしています。
Q. 資格を取れば年収は上がりますか?
イラストレーターには、名乗るために必要な国家資格はありません。年収を左右するのは資格の有無より、どんな市場で、いくらの単価で仕事を受けるかです。イラストレーターになるまでのルートは、こちらの記事で整理しています。
Q. 年収400万円を目指すには、どのくらいの単価が必要ですか?
年間400万円の売上を作るには、ひと月あたり約33万円が必要です。1件1万円の案件なら月に33件、1件3万円でも月に11件ほどを、休まず受け続ける計算になります。ここから手数料や経費が引かれることを考えると、単価が数千円〜数万円の市場で年収400万円を安定して超えるのは、簡単ではないことが分かります。
まとめ:年収の数字より、「単価がどう決まるか」を見る
イラストレーターの年収は、統計では492.2万円です。ただしこれは会社に雇われて働く人の数字で、実際にはフリーランスで働く人が大半を占めています。フリーランスの収入は「単価×件数」で決まり、数千円の案件を積み重ねる働き方では、収入を伸ばすのに限界があります。
絵を仕事にして収入を上げたいなら、描く量を増やす前に、どんな単価の市場で働くかを考えてみてください。その選択肢のひとつとして、単価の基準が決まっている「お絵かきクリエイター®」という働き方も、頭の片すみに置いてもらえたらうれしいです。


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